目次

序文

1    マスタープラン策定にあたっての基本的な考え方について

2    マスタープラン見直しの視点について

3    具体的な項目ごとの提案

3.1 市街地再開発事業について

3.2 農業振興について

3.3 公共施設について

3.4 都市計画道路について

■ 都道[小平 3・3・3 号線]の開発と商店街の消滅

■ 都市計画道路と緑地の保全 都道と交錯する玉川上水、グリーンロード

■ 都市計画道路と緑地の保全 小平西地区の緑と 3・2・8 号線

3.5 都市計画道路以外の道路の改善について

3.6 住宅地区についての提案(こんな地域をつくりたい)

4  結論:市民主体のまちづくりを実現するために

4.1 市民同士の話し合いと合意形成の必要性

4.2 市民と行政をつなぐ「総合窓口」と「市民会議」制度の条例化の提案

序文

小平市民が集まってつくっているグループ「わたしたちのまちのつくり方」は、2015 年 11 月

から 2016 年 3 月にかけて開催された小平市教育委員会主催の平成 27 年度市民学習奨励学級「市

民の思いが実現するまちづくりへ」に参加した者のうち、学級終了後も、継続してまちづくりに

ついて学び、取り組んでいくことを希望したメンバーが中心になり、2016 年 4 月に発足しました。

折しも小平市では、2014 年度から「小平市都市計画マスタープラン」の改訂作業を行っており、

2015 年から「まちづくりサロン」なども開催されていたことから、「わたしたちのまちのつくり方」

では、まずこのマスタープランの改定案を検討し、これについて市民としての声を届けることに

取り組もうということになりました。

そして、会合で意見を出し合い、文章を寄せ合って、この「提案」を作成しました。現在公表さ

れているマスタープランの改訂案では、5つある「まちづくりの戦略」の一つに、「市民の “ ちから ”

でまちをつくる」ことが掲げられています。「小平市都市計画マスタープラン」の改訂にあたっ

ては、ぜひこの「提案」に盛り込まれている市民の意見を参考にし、取り入れてくださいますよ

う、お願い致します。

1 マスタープラン策定にあたっての基本的な考え方について

■ 日本国憲法前文:主権は国民に存する。

主権は国民にある、ということです。このことは勿論、国も都も小平市も、そして市民も文字面

では知っています。しかし、現実面ではその意識は備わっているのでしょうか。主権は本当に守

られているのでしょうか。

■ 国と地方の関係は対等・協力関係である。

日本人には、上位下達の意識が残っているのではないでしょうか。国から都へ、都から市町村へ、

そして市民へと指示が出される、と思っているのではないでしょうか。2000 年施行の地方自治

法改正により、国と地方の関係は、「上下・主従」の関係から「対等・協力」の関係へと変わり

ました。

*地方自治法:日本国憲法第  92 条地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治

本旨に基いて、法律でこれを定める。」に基づき、「地方自治の本旨に基いて、地方公共団体の区

分並びに地方公共団体の組織及び運営に関する事項の大綱を定め、併せて国と地方公共団体との

間の基本的関係を確立することにより、地方公共団体における民主的にして能率的な行政の確保

を図るとともに、地方公共団体の健全な発達を保障することを目的とする」(第 1 条)。

■ 小平市の立ち位置は小平市民と同じ立ち位置にあるべき。

地方自治行政の本旨は、地方自治は国の指揮監督を受けることなく、地方公共団体によって自主

的に行われなければならず、かつ、住民の意思を反映したものでなければならない、とされてい

ます。

2   マスタープラン見直しの視点について

現在の年齢別人口構成を見れば明らかなように、これから日本全体が人口の減少と高齢化の時代

を迎えます。もちろん、東京都も例外ではなく 2020 年をピークに人口は減少に転じると予測さ

れています。そのなかで小平市がどのような街づくりのビジョンを持ってこれを計画し推進して

いくのか、私たちは最も基本的な街づくりの要素として、この人口の減少と高齢化、そして経済

縮小への対応を背景に置くべきであると考えます。

それゆえ東京都の道路計画との関係や箱物インフラの整備だけを前提とした表層的な計画ではな

く、地域のコミュニティの持続や活性化という本来の街づくりの目的を実際の施策へと繋げるこ

とで、初めてそこに選ばれるアイデアや優先される開発、今後の計画の策定が可能になると思わ

れます。同時にこれらを新しい街づくりのモデルとして積極的に提唱することこそが、小平を魅

力的な生活環境として内外に注目させる効果を生むと思います。

これらを踏まえ、小平市の本来の街づくりのために以下の視座を持っていただきたいと思います。

■ 百年の時間単位で考える「街づくり」を…

■ 小平の街づくりビジョンを実際の施策と分離させないように…

■ 小平の街づくりが都の計画と乖離する場合は、都に対して明快な申し立てを…

■ 形骸的な意見の吸い上げではなく、街づくりのために有効なコミュニケーションを…

3  具体的な項目ごとの提案

3.1  市街地再開発事業について

高層の開発ありきの街づくりではなく、持続可能な住みやすい街はどうあるべきか、低いところ

からの市民目線で改良していく。

■ 各駅の特徴を生かした賑わいを創造する。賑わいを市・商店街・市民と一緒に創造していく。

花小金井駅:

東からの小平市への入り口と言える駅。小平の中では都会的な匂いがする。魅力的な菓子店、レ

ストラン等もが多い。南口は、グリーンロードへの接続が容易。小平駅との中間に昭和病院、ふ

るさと村がある。

小平駅:

南口は、グリーンロード、あかしあ通り(グリーンロード化予定)への接続が容易。北口は、小

平霊園、多摩済世病院周辺に残る農地等の緑空間が広がる。小平駅北口地区市街地開発に向けて

準備組合が立ち上がっている。

小平駅南口グリーンロードについて

グリーンロードは小平市の「売り」です。しかし、この樹木が立ち並ぶ姿は小平駅前で途切れて

います。ここから西側は樹木の姿が少なくなります。ただ、その部分は、小平市ではなく、八坂

の九道辻まで東村山市萩山町になります。又、グリーンロードの狭山・境緑道部分は、下に水道

管が埋まっていて東京都の持ちものです。小平市の「売り」なのですから、予算を付けて、何と

か交渉して、毎年 2 ~ 3 本ずつでも木を増やして、もっと誇れるグリーンロードに出来ないも

のかと願っています。

【提案】グリーンロード狭山・境緑道の小平駅南口西側は、隣接市の部分においても交渉し、

予算化し計画的植樹を行う。

小平駅北口地区市街地開発について

平成 27 年 9 月 5 日に再開発準備組合が立ち上がりました。その後、総合コンサルタントとし

て、㈱アイテック計画が決まり、資金的、人的協力を得るため権利者のパートナーとなる事業協

力者として、㈱三菱地所レジデンス、㈱野村不動産、㈱東京建物が決定し、再開発に向けて動き

出しています。再開発事業は地権者中心に進められますが、小平駅周辺のまちづくりに大きな影

響を与える再開発であることを考慮し、地権者だけではなく、小平市が積極的に関わり、小平駅

北側と南側の住民の意見も反映しながら進めるべきと考えます。現在の再開発イメージ図を見る

と、中央の広場を挟み東西に低層の商業地域と中層から高層の都市型住宅を配す案が示されてい

ます。計画通り高層マンションが建つと景観上の問題もあります。

小平駅の乗降客数を見ると、38,405  人(2015 年)で、隣駅の花小金井駅の 55,538 人と比較

すると約 1 万 2 千人も少ない数です。駅の南口には西友と小型商店、ルネこだいらがあります。

北口には郵便局、花屋、飲食店、石屋、葬儀場等があります。西側には小平霊園が広がり、その

分住宅は少なくなっています。墓参の時期には駅は混雑しますが、それ以外の時期はそれほどの

混雑は見られません。大規模な商業施設が採算が取れるのかどうか、将来に負の遺産を残さない

ためにも慎重に検討する必要があります。

再開発地域の中には市の都市計画道路 3・4・19 号線が含まれています。市は平成  26 年 6 月、

再開発地域の北側に隣接する小平 3・4・19 号線対象区間の住民に対してアンケ―トを行ってい

ます。その結果、道路が狭く危険で防災上の問題もあり、都市計画道路の整備に期待する声も多

くみられますが、一方で、商業施設の誘致については反対の意見も多くあります。

【提案】小平駅北口再開発は、準公共的施設であることを認識し、小平市が積極的に関わり、

地権者だけでなく、広く市民の要望・意見を集約し、それを反映した計画の骨子を創り上げる。

【提案】小平市駅前の魅力ある環境を創出するために、公開コンペを実施する。

一橋学園駅:

JR 国分寺駅へは一駅で、駅の東西には古くから良好な住宅地が広がっています。西武線萩山駅、

玉川上水駅、西武遊園地駅等とも結ぶ駅です。駅の北口は、昭和レトロと新規店が入り混じった

わくわく商店街。学園坂商店街には、BOX ショップ、NPO 的お総菜屋さん、コミュニティビジ

ネス支援の拠点や、小平コワーキングスペース「すだち」等もあります。

坂の上商店街と坂の下商店街が統一して運営されるよう、市が仲介に入ることは出来ないでしょ

うか。別々にするのはもったいないと思います。また、どういう店にしたらよいか、空き店舗に

どのような店を誘致してくればよいかなども、専門家を交えて、話し合う場の提供もお願いした

いです。

【提案】市が仲介し、一体感のある商店街として統一した運営を援助する。

【提案】集客力のある商店街とするために、空き店舗にどのような店を誘致すればよいかなど、

専門家を交えて、話し合う場の提供を市が行う。

東大和市駅:

南口(小平側)⇔グリーンロードへの接続が容易、都立薬用植物園、玉川上水の緑も近い。衛生

組合の足湯もあり、健康・癒しゾーン。

鷹の台駅:  

中央公園と玉川上水の緑の回廊の入り口。学生の街。

青梅街道駅:

 青梅街道に面している。小平市役所、福祉会館、中央公民館、中央図書館、JA 東京むさし

ファーマーズマーケット「ムーちゃん広場」等へのアクセスがいい。仲町テラスも徒歩圏内にある。

新小平駅:

 市内で唯一の JR の駅。武蔵野線で、南北への移動が可能。周りには農地も残る。津田塾大学、

白梅学園大学、武蔵野美術大学の学生の利用も多い。

小川駅:

 市内の西の顔ともいえる。再開発事業計画あり。

小川駅前周辺地区 まちづくりビジョン』の抜本的な見直し

「高度に集約したまち」の発想は、これから迎える高齢化社会のあり方に適合すると思われます。

しかしながら商業施設や公共公益施設などが入った超高層タワー型の複合住宅施設を中心に据え

るという方法は抜本的に見直すべきだと思います。なぜなら、近隣の他の地域との競争のなかで

集客や住民の増加を目論む方法を取ることは、その勝ち負けのリスクに対してあまりにも無頓着

すぎる内容に映るからです。

つまり地権者を中心とした組合による市街地再開発事業として推進させる方法が、狭い範囲での

利権の幻想に踊らされるだけの結果を導き、本来のまちづくりを阻害する要因となっているよう

に思われるのです。そのような部分最適化、あるいは時間的な延命措置は、抜本的なまちづくり

のビジョンにはなりえません。

小平市でも本来のコンパクトシティの方策をゼロベースで検討する必要があると思います。それ

は最も合理的な街の姿へと都市機能を交換しつつコンパクトにすることが目的であって、都市機

能の増設による集客によって、単に来訪者や住民を増やすことから始まるのではありません。超

高層タワー型の施設を作ることと違って、本来の「高度に集約したまち」によって高齢化社会の

中に住みやすい街の形を設計することはたいへん困難ではありますが、それを見つけることに大

きな価値がありまs。その結果から自ずと小平への集客と活性化が起こるのではないでしょうか。

【提案】小川駅西口再開発に、低層開発を基本としたコンペを実施する。駅前の魅力ある街づ

くりを創出し、小川町のポテンシャルを上げる。

3.2  農業振興について

平成 27 年 4 月に都市農業振興基本法が制定され、これまで宅地化されるべきものとされていた

都市の中の農地を、都市農業の多様な機能を重視し、良好な市街地形成にあたって農地は保全さ

れるべきという方針の大転換がされました。小平市でも農業振興計画検討委員会を発足させ、平

成 30 年 3 月までに計画を策定することになっています。小平に残された農地は、現在 200ha

を切っていますが、その農地は、食糧提供だけでなく、景観、防災、環境教育等様々な機能を有

しています。現在、市民としての関わり方としては、農業ボランティア、公園ボランティア(緑

の保全)、市民団体のボランティア協力(例:小山農園)などがあります。

しかし、農地は農家の所有物・財産であるため、農地保全・景観維持等に関して行政と市民がど

こまで関われるのか、非常に難しい側面があります。今後は、小平に残すべき農地を行政が確保

し、その維持システムを構築することが必要であると考えます。行政と市民との協力の仕方とし

て以下を提案します。

【提案】緑を保全する緑債を発行する。

【提案】市が買い取る予定の農地へ市民として関われる体制づくりをする。

【提案】農業公園での農業体験企画、農家レストラン(農家パブ)開設等を市民と協力しなが

ら進める。

【提案】農業を 6 次産業化して、若い人達が農業分野に参入し、起業・就業できるような支援

を市として行う。

【提案】いわゆる「プチ田舎」構想を市民と共に計画的にめざす。

3.3  公共施設について

公共サービスを住民に提供するには財源が必要です。しかし、今後、経済衰退と人口減少の中で、

今まで作ってきた多くの公共施設の老朽化と更新時期の集中が、同時に起こります。それは、必

要な公共サービスの提供に対して財政的に大きな障害になることは明らかです。

既に財政破綻している地方自治体においては、その解決を住民自身に委任せざるを得ない事態に

なっています。東京都が、小平市がそうならないとは誰も断言できません。小平市では、そうな

る前に、住民参加という生ぬるい政策ではなく、住民自治という一歩踏み込んだ政策が必要だと

思います。

そのために、一定のエリアごとに、そのエリアの住民と、そのエリアの公共施設の情報を共有し、

人口減少のシミュレーションを行い、将来像を住民と一緒に模索する時代に入ったことを、認識

してもらい、一緒に解決策を見出すことです。きめ細かい政策とその実行が必要です。

【提案】一定のエリアごとに、エリア内の公共施設の情報を住民と共有し、住民と一緒に解決

策を見出す。

多くの自治体で、公共施設に関しては、人口減に伴いその削減を計画しています(道路は公共施

設ではないのか、という疑問もありますが)。小平市も「公共施設マネジメント」と称して検討

を始めています。今後市民との協働無くして、行政運営もままならない状況に陥ることが目に見

えている現状において、削減予定の公共施設を中心とした、半径 500m の住民に対して、合意

するまでの丁寧な説明会を開き、決定に当たってはその住民の約 8 割の住民が合意することを成

立要件としてはどうでしょうか。

【提案】公共施設を削減する際には、半径 500m の住民に対して丁寧な説明会を開き、約 8 割

の住民が合意することを決定の成立要件とする。

3.4 都市計画道路について

市内でこれから進められようとしている都市計画道路は全て 50 年以上前に計画されたものです。

そして、いまから 50 年後には、現在の日本の人口 1 億 2700 万人が 6 割の 8000 万人程度にな

ると予測されています。これは 1950 年、つまり 66 年前の人口です。東京都においてもいずれ

同じ現象となります。

このような将来像を十分に認識し、都市計画道路が道路周辺環境と地方自治の財政面に与える影

響を、正確に把握し、東京都に進言することが必要です。小平市民の意見を十分に集約し、こだ

いら市民と同じ立ち位置にある小平市として、都市計画道路の見直しを都に提言することを望み

ます。事実、東京周辺の他自治体では見直しが始まっています(埼玉県など)。都内に住んでい

る都議の方々のみが人口減少を実感として受け止められていないのではないか、という懸念を表

明して頂きたいと思います。

具体的には、小平市民の意見を十分に把握・集約するために、都市計画道路の長さ 500 mもし

くは 1000m ごとに、その影響が大きいエリア、それを仮に道路から両側に 200m の範囲として、

その住民に対し、丁寧な説明会を開き、市民の意見を十分に把握することを求めます。そして、

その住民の約 8 割の住民が合意することを都市計画道路建設の成立要件として頂きたいと思いま

す。

【提案】都市計画道路の長さ  500 ~ 1000m ごとに、道路の両側  200m の範囲の住民に丁寧な

説明会を開き、住民の約  8 割が合意することを都市計画道路建設の成立要件とする。

都道[小平 3・3・3 号線]の開発と商店街の消滅

50年前の都市計画道路小平 3・3・3 の一部を優先整備路線として突然作り始めることによって、

その付近に営々と続いた商店街を軸とするコミュニティーが突然消滅することになります。見え

ないものだけれども街づくりにとってもっとも重要な要素であるはずの「人と人のネットワーク」

の価値は、この状況の中で十分に考慮されるべきです。無批判に都の無作為な道路計画に従うの

ではなく、現在の商店街の状況とこれからの道路の実施計画を比べて、最善策としての最適解を

導くべきです。もし万が一この机上の計画通りに短期間で優先整備路線としてこの道路が敷かれ

るのならば、単に道路にかかる地権者への金銭的補償という方法では、コミュニティーの消滅と

いう事態の解決が遠くなります。相応の方策を道路幅の数十倍の範囲、さらには地域開発におけ

る土地の交換等の策を含めて、十分に練るべきであり、導かれた新たな解決の方策とその合意を

広く取ることによって初めて、都の都市計画道路と小平市のまちづくりの親和性が担保できるは

ずです。

【提案】道路幅の数十倍の範囲で、地域開発における土地の交換等の策を含めて、最善策を十

分に練り、広く合意を取る。

都市計画道路と緑地の保全 都道と交錯する玉川上水、グリーンロード

東西方向に流れる玉川上水と、南北方向に走る都市計画道路のすべては必ずどこかで交差します。

また都市計画道路小平 3・3・3 とグリーンロード(狭山・境緑道)は長い距離で交差することに

なります。道路を計画すれば、当たり前に起こることではあるけれど、空間的に時間的により俯

瞰できる視座から観れば、これらの交差はそれぞれの文明的な機能として、あるいは歴史的な価

値としてのインフラの大いなる「印」です。

したがって、交差する全ての場所は、単に治水や交差点の機能を工事として収めるのではなく、

その象徴性を十分に引き受けたひとつの「かたち」として設計すべきです。そのように小平に於

けるすべての文明の交差がデザインされることで、普遍的な自然と都市開発のテーマが浮かび上

がり、小平のまちづくりのビジョンが内外に強く印象づけられることになります。具体的な方策

としては、小平市内の各々のクロスポイントについて数々のデザインコンペティションを開くと

いう方策が考えられます。まちづくりの可能性を開きつつ、また小平が文明的な視点で環境を大

事にする場所であることを広くアピールする機会を与えることとなるでしょう。

【提案】玉川上水やグリーンロードと都市計画道路が交差する部分について、デザインコンペ

ティションを開く。

都市計画道路と緑地の保全 小平西地区の緑と 3・2・8 号線

「まちづくりの整備方針」内の矛盾

小平市都市計画マスタープラン改定の全体構想案では、小平市のまちの特徴の一つとして、玉川

上水や野火止用水などで構成される「小平グリーンロードを骨格とした豊かな水と緑」を上げて

います。そして、「まちづくりの整備方針」の一つとして、「水と緑のまちづくりの方針」を掲げ、

小平グリーンロードと市内に点在する緑地や用水路を保全・活用して、「水と緑のネットワーク

の形成を図り、人々が憩い、楽しむことができる空間として活用を図る」ことを提案しています。

また、全体構想の「まちの将来像」でも、「誰もが地域資源に魅せられて暮らしたくなるまち」

として、「水と緑のネットワークを中心とした魅力あるまちの形成」をめざす、としています。

その一方で、「まちづくりの整備方針」には、「道路・公共交通ネットワーク等の整備方針」も上

げられ、「広域ネットワークを形成する都市計画道路を推進します(幹線道路の新設)」として、「都

市計画道路は、・・早期実現に向けて引き続き取り組みを進めます。」となっています。

しかし、整備方針として同等に掲げられた「水と緑のまちづくりの方針」と、「道路・公共交通ネッ

トワーク等の整備方針」が両立しない場合は、どうしたらよいのでしょうか。都市計画道路 3・2・

8 号線の整備について、住民投票が行われたのは、まさにそのような事情からでした。

西地区では特に緑が重視されている

これまでに開催したまちづくりカフェやまちづくりサロンにおいても、特に市の西部には緑が多

く残っており、これを活かしていくことの重要性が指摘されています。そのことは、小平市が平

成 26 年に行ったアンケートで、「小平で大切にしたいもの、活かしたいもの」として、鷹の台

駅周辺では、市内の他地域と比べて「玉川上水や用水などの水辺環境」や「農地や雑木林」を上

げた人の割合が高く、「玉川上水や用水などの水辺環境」を大切にしたいという人が 80% 以上に

上ったことにも現れています。

東久留米市都市計画マスタープランの例

平成 24 年 5 月に策定された「東久留米市都市計画マスタープラン」は、2 年間に 18 回開催さ

れた「市民検討会(学識経験者 3 名、市内の各種団体構成員 7 名、公募市民 5 名で構成)」、の

べ 230 人が参加した「地域別懇談会」などを通じた丁寧な市民参加プロセスを経てつくられま

した。

そして、都市計画道路については、「自然環境を守ることを前提とした区間」を 3 か所設け、「本

市の財産である南沢湧水地を横切る形で計画されている都市計画道路東  3・4・12 と、同様に竹

林公園を横切る同 3・4・18 の整備にあたっては、その環境を守ることのできる整備のあり方が

明らかになるまで当該箇所の整備を留保」すること、また、「都市計画道路東 3・4・21 の整備

にあたっては、小山緑地保全地域の自然環境を踏まえ、整備のあり方を検討」すること、を明記

しました。緑の保全と都市計画道路の整備が矛盾する箇所については、その両立を検討・確保す

ることを明らかにしたわけです。

矛盾の解決に向けて「地域の課題は地域で解決する市民主体のまちづくり」へ

以上のように、まちづくりの方針に矛盾が生じる場合に、どうしたらよいのかについてのアイデ

アも、小平市マスタープラン改定案の全体構想には書き込まれています。まず、「小平市のまち

の特徴」として、「本市では様々な分野での市民の活動が活発であり、・・それぞれ自立的な活動

を展開しています。このため、まちづくりにたいする意識の高い市民が多いといえます。」、「小

平市自治基本条例、小平市民等提案型まちづくり条例を制定し、市民主体の街づくり活動の活発

な展開が期待できる土壌が整っています。」と書かれています。

そして、「マスタープラン見直しの視点」に「参加と協働のまちづくり」を掲げ、「市民が積極

的に関わることができる参加と協働のまちづくりを推進します。」としています。また、今後 10

年間で優先的に取り組むべき「まちづくりの戦略」に、「市民のちからでまちをつくる」ことを

掲げ、「行政による画一的な取り組みではなく、市民主体のまちづくりを推進」し、「地域の人々

の活動によるつながりから得られる共感をちからにして、地域の課題は地域で解決する市民主体

のまちづくり」を進めるとしています。

道路の整備と、水と緑のまちづくりが矛盾する場合にも、「地域の課題は地域で解決する市民主

体のまちづくり」を実践してはどうでしょうか。「道路・公共ネットワーク等の整備方針」には、「広

域ネットワークを形成する都市計画道路整備を推進します」と書かれ、地域別構想の西地域の案

には、「市内の円滑な道路交通ネットワークの形成に資する小平都市計画道路 3・4・10 号線、3・2・

8 号線、3・4・24 号線について、整備推進を図ります」と書かれていますが、このような行政

からの方針を頭ごなしに一方的に示されても、市民は納得できないまま、市民参加は実現不可能

です。

本当に「市民主体のまちづくり」を進めるには、例えば、都市計画道路 3・2・8 号線の整備と、

玉川上水や雑木林の保全が両立しないのなら、どちらを優先させるべきか、あるいは両立させる

方法はないのか、という課題を議論し、より多くの人が納得する解決へと導くための地域での話

し合いの場を市の西地区で設けるべきだと思います。

ドイツでは、まちづくりなどでの課題を解決するために、市民が話し合う地区協議会などの場が

設けられ、市民同士で徹底した議論が何回も続けられ、大方の人が 8 割方納得する案が出来るま

で、話し合いが続けられると聞きました。そのような話し合いの場を当該地区で行政府、あるい

は行政府が認める市民組織が設け、多くの市民の納得が得られるまで、我慢強く続ける、という

のが、まちづくりの方針に矛盾が生じている場合の最善の解決方法だろうと思います。

あまり活用されていない「小平市民等提案型まちづくり条例」をそのような話し合いの場を設置

するために活用できるようなものにすることも提案します。

【提案】地域の多くの市民が納得するまで話し合う場を設置する。

【提案】「小平市民等提案型まちづくり条例」をそのような話し合いに活用できるようなものに

する。

3.5  都市計画道路以外の道路の改善について

道路についての市民の意見、  要望を見ると圧倒的に多いのが、  道路が狭く歩道がないか、  狭いた

めに歩行や自転車通行が危険で何とかしてほしいということです。市の都市計画道路の完成率が

40%程度とのことですが、上記の問題は、これが出来ても必ずしも解消されるものでないことは、

具体的に夫々の道路位置に当たってみれば分かることです。多くの市民が悲鳴をあげているこの

問題は、都市計画道路よりも優先して取り組むべき喫緊の課題です。そこで、以下を提案します。

先ずはこのような道路を優先的に整備すべき市の都市計画道路に指定する。しかし、居住者の事

情・市の予算などを考えると、  一度に土地を全部買収して広げることは不可能と思えます。その

ため、使える手法をいくつか用意し、   道路毎に現場を丁寧に調査して、  部分的でもよいから出来

得る限りの改善を実行するのです。思いつくままにその手法をあげると、

① 購入出来そうな農地・駐車場・売地・建替え地他などを少しでも多く買収して、部分的にで

も歩道を拡げ、歩行者や自転車の言わば退避場所をつくる。そのために、いわゆる 2 項道路のよ

うな規定を設ける。   ( ただし有償取得 )

② 一本裏の道があれば、  これを出来るだけ平行して連続する副道となるよう、部分的に土地を

購入してでも歩行・自転車道として整備する。

② 車の利用が多少不便になっても、一方通行化が可能なところは積極的にこれを進め、車道を

一車線にして歩道を拡大する。

このように、従来の都市計画道路のように、 一気に立ち退きを促し造らなくても、現場の事情に

応じて、時間がかかっても、少しでも安全な道路へと改善していくべきだと思います。

【提案】都市計画道路ではない狭い道路を市が優先的に整備すべき道路に指定し、様々な手法で、

少しずつ部分的にでも、歩行や自転車通行が安全な道路へと改善していく。

3.6  住宅地区についての提案 ___ こんな地域をつくりたい

今回のマスタープランでは鉄道ターミナルの都市機能集積拠点、道路のネットワーク、緑の拠点、

緑のネットワーク等、いわば都市のインフラについては多く書かれていますが、それ以外の都市

の大部分を占める住宅地区をどうするのか、どんな暮らしができるのか、具体的なイメージがあ

りません。

少子・高齢化は既に身近で著しいものがあります。働きざかりの男性・女性は昼間は地域にはい

ない。学生もいない。活動時間の昼にいるのは高齢者・一部の主婦・わずかの幼児・児童・学童

です。このような町で人々が元気で快適に自立して暮らしていくためには、必要とする施設が身

近にあり、そこへ安全に歩いていけることが一番大事です。

小学校は昔から既に学区ごとに配置されています。これと同じような町の範囲に、例えば小規模

なデイケアー・ショートステイ、高齢者が立ち寄り集う「シニアの家」、小規模な託児所、児童、

学童を預かったり、遊びに行ける「子供の家」等々がモザイク状に配置されていると、どれほど

有り難いかわかりません。もちろん、食堂・カフェー等 ( 例、こども食堂 ) が併設されればもっ

と良いです。不要なものを持ち寄る「リサイクルの家」などもあれば便利です。コンビニ・食品

スーパーなども徒歩圏に設置を誘導したいです。

また住区の中には緑のネットワークや緑の拠点とは異なる、もっと身近で親しめる緑が是非とも

必要です。庭の植栽や生垣もそうですが、なかでも最も望まれるのは市民菜園です。一定の範囲

の住区に必ず一つか二つ配備されれば、どれほど暮らしに活力と潤いをもたらすことでしょうか。

これに小さな林、憩いの場、幼児の遊び場などが併設されるともっと良いですね。うち捨てられ

たような、淋しいポケットパークなどをよく見かけますが、これらも換地をして上記の「家」や「菜

園」と併設するとよいと思います。また、空き家跡を利用した小規模菜園が複数散在するのもよ

いでしょう。菜園ではコンポスト化した肥料の使用を義務づければゴミの減量にも役立ち、大地

とのエコな循環が出来ます。

このような住区内を安全・安心に徒歩や自転車で行き来できるためには、宅地内の道路の形態と

その管理にも目を向けたいと思います。住区の一定の区域毎に、部外者の車が通過しにくい道路

の工夫(例えばバンプ)や、速度や部外者制限の大きな看板を設けたりして、一般の道路とは違

う「道」にしたいです。子供達が一番多く使う身近な遊び場は家の前の道路なのですから。そも

そも小さな住区内の道路が、巾が違うだけで一般の道路と全く同じ設計規格でつくられているこ

とが不思議です。この種の道路は交通のためだけではなく、家の前の広場、まちのコモンスペー

スとして計画した方が良いと思います。

また高齢者はしばしば移動や、物の運搬などが困難です。地域内での車の相乗り、共同使用など

車による助け合いのシステムも是非つくりたいものです。ここでは地域マネーの使用なども考え

られます。

実現への方策

少子・高齢化による都市の変化は小平市の住宅地でも頻々と起きています。空き家やシャッター

商店の発生にみられるいわゆるスポンジ状の空洞化です。しかし、これは都市計画にとってチャ

ンスでもあります。これを逆に利用すれば今後、住区内での土地や家屋の購入や借用はさほど困

難ではなくなります。まちづくりを進める市が情報提供を受け、持主と話し合いが出来るような

制度を作れないものでしょうか。 情報を得た住民のまちづくり組織が市と協働でことに当たる

ことが出来ればもっと良いです。

しかし、市民菜園のようなまとまった農地を残したり、入手することはなかなか難しいことです。

市が中心になって農地利用に積極的な介入をして、換地などの手法で入手するとか、あるいは農

家が事業として経営出来るような新しいシステムを作り出す必要があるでしょう。これについて

は各地に様々な事例も生まれつつあります。

先に述べた種々な「家」の運営は、民間のできれば地元の元気な高齢者や主婦が働ける事業とし

て行われることが望ましい。そうすれば地域に働く場が出来、活性化にも大いに役立つに違いあ

りません。いずれは地域マネーなども導入して、活動が広がれば地域の人のつながりも深まりま

す。このような地域の暮らしに結びついた活動が盛んになることによって、はじめて参加と協働

のまちづくりが可能になるのではないでしょうか。

このような地域に必要な小さな施設を見極めるには、住民の要望を聞くと同時に、市の専門家の

調査も必要です。教育、福祉、医療、産業 ( 商業、農業 ) などの暮らしに関係の深い分野の機能 ( 施

設 ) 分布を、  各課で地図上にプロットし、重ね合わせて見れば、何が欠けているか、重点的に必

要かが見えてくるはずです。計画のまえに調査を実施し、必要施設を確かめ、政策的に誘導して

欲しいものです。

【提案】学区規模のまちごとに高齢者や主婦、子どもたちに必要な小規模施設や、市民菜園な

どの緑地を設ける。

【提案】住区内の道路はコモンスペースとする。

【提案】「地域マネー」も活用し、地域の施設は地域の人材で運営する。

【提案】地域に必要な施設を市が調査し、政策的に誘導する。

4 結論:市民主体のまちづくりを実現するために

4.1  市民同士の話し合いと合意形成の必要性

都市計画マスタープランで、小平市の「地域別構想」や、さらに細かな「地区」単位の詳細化を

進めていくと、自分たちの住環境からくる「住民の論理」が出てくる可能性があります。例えば、

「この道は通さない」といった、地元住民のエゴが前面に出てきたりします。そういうことを各々

のエゴの集団ごとに出しながら、より高い段階で市民的に調整し、妥協することが必要になって

きます。

都市計画マスタープランを作るプロセスでは、「官(行政)対市民」の関係から、「民対民」の関

係や、住民や関係権利者間でかなり細かな対立が出てくる可能性があります。要は、表現は適切

でありませんが「エゴをどうするのか」ということです。

解決法としては、「住民・市民」として普遍的に合意形成を進めることです。その場合、個々人は、

小平市全体のことを考えてみなければいけません。地域のなかで「街」の特色をどうしたいのか、

市民のために、「こういうまちづくりをしていこう」と、皆で考えることです。

したがって、「この地域はこうあるべきだ」というパラダイムを設定して、そのなかで個別案件

を考えられる人たちを、育てなければならないと思います。そのためには、地方自治法上のマス

タープランづくりを常に市民自身が考え、市民の発想を大事にしながら、地域の各論を考えてい

くことです。これは一種の往復運動です。都市計画マスタープランと個別の実践を長い往復のス

パンで考えていく必要があります。

4. 2  市民と行政をつなぐ「総合窓口」と「市民会議」制度の条例化の提案

市民からのアイデアを市政に有効に活用するために、市民からの情報提供・企画提案を受け入れ

る「総合窓口」を設置してはいかがでしょうか。総合窓口が中心となり、市民からの情報提供・

企画提案を精査しながら、実現可能なものから事業を進めていくのです。

現在は、行政の縦割りが、多岐にわたる問題を解決しながら有効なまちづくりを行う上で、大き

な弊害となっている場合も多いですが、部・課を越えた俯瞰的な視点を持った機関として、「総

合窓口」を市長直属の位置に置けば、まちづくりを推し進めていくのにとても有効な役割を果た

せると思います。

また、窓口へ市民からのアイデアや、小平市の公共に関する解決すべき課題や問題点、対立事項

が寄せられた場合に、「市民会議」を開いて、市民からの新しいアイデアの捻出や、相互理解を

図ることも、より良い市政を進めるのに有効と思われます。市民と市民、市民と行政が一緒に解

決策を考えたり、対立する立場の人たちが互いの意見を聞きあい、相互理解をして多くの人が納

得した上で市政を進めるための、市民会議の場のシステムを作るのです。

例えば、この提案書で出させて頂いたような、様々な問題提起や提案を検討する際も、市民会議

で市民を巻き込んで協議をすることで、新たなアイデアが生まれたり、いざ実行に移す際に市民

と行政が一体となってスムーズに進めることができるでしょう。潜在している市民の方々の力や

アイデアを活用するきっかけになればと思います。

【提案】市民からの情報提供・企画提案を受け入れる「総合窓口」を設置する(市長直属で)。

【提案】「総合窓口」に、アイデアや解決すべき課題、対立事項などが寄せられた場合に、話し

合いと合意形成を進めるための「市民会議」を開く。

【提案】上記2項目を条例化する。

小平市都市計画マスタープランへの市民提案

発行:2016 年 11 月 8 日

編集制作:わたしたちのまちのつくり方