「わたしたちのまちの再開発(2018/9/29)」ワークショップの報告

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ワークショップの参加者について

当日のイベントには雨のなか、大勢の方に参加いただいた。参加者の構成は、小川西町1-5丁目、小川東町1丁目と栄町など、小川駅近隣住民の方が18名、それ以外の市内在住者21名、他市が8名の合計47名だった。ワークショップの参加者はそのうちの40名程度。

ワークショップは6-7名のチームの6班によって行われた。地元の実情をよくご存じの方、関心の強い方が多かったが、計画については深く知らないため、深く知りたいという人が多かった。再開発に肯定的な人、否定的な人、どちらでもない人と考え方は多様だった。ワークショップ1「小川駅に西口再開発について知りたいこと、不安に思うこと、言いたいこと」、ワークショップ2「小川駅西口はどんな街で、(再開発後に)どんな街になってほしいか?」という2つのテーマで行い、6班のテーブルで、スタッフ以外は班の参加者を入れ替える方式で行った。

 

ワークショップ1 小川駅に西口再開発について知りたいこと、不安に思うこと、言いたいこと

(ワークショップの主な意見のまとめ)

前半のワークショップ「小川駅に西口再開発について知りたいこと、不安に思うこと、言いたいこと」では、市民への情報提供不足に対する声と、計画に対する心配の声が多かった。「知りたい」については、ビジョンやコンセプトが示されていないという意見が上がっていた。

公共の予算がいくら使われるのか、費用対効果は?予算をかけてうまくいかなかった場合はどうするのか?という投資に対する責任の所在を求める声が多かった。イベントの前半に行った再開発計画の説明は、小平市議会の都市基盤整備調査特別委員会の資料をベースに作成し、予算や収支についても丁寧に説明したつもりだったが短時間での説明だったため十分には理解してもらえなかったようだ。

 

(「わたしたちのまちのつくり方」からの補足説明と意見)

本事業が市の施工ではなく、地権者からなる組合施工であることから、小平市は計画そのものについての説明会は行っていない。用途地域の変更など土地利用ルールの変更のための都市計画決定・変更の手続きに伴う説明会のみを市民向けに行った。組合は周辺住民に対しての説明会しか行っていないが、民間事業であることを考えると必要以上の説明をする理由もない。しかし、小平市は立場が違う。小平市の負担分の予算だけでも建物に対して約11.5億円、駅前広場など公共施設に約16億円、低層棟の公共施設の買取金として約25億円と、合計約52.5億円の税金を投入する事業である。市は小平市の都市基盤整備調査特別委員会での説明だけではなく、市民へ予算に関して情報提供をするべきであるし、市議も委員会で説明を受けた内容を、広く市民に伝えていく努力をする必要がある。東村山の西口再開発での事例でも「民間の事業である」という理由で市が市民への説明を行わなかったために、工事開始の直前で住民投票を求める直接請求の運動が起こっている。小平市には、適宜、市民への説明の場をもつことを求めていきたい。

今回のイベントの企画段階で心配していた計画に反対する人と推進する人との意見の二項対立については、まったくの杞憂だった。それぞれの立場の人が同じテーブルに座ったが、お互いの意見を聞きつつ、自分の意見を述べ穏やかな雰囲気で話し合いができた。計画を強烈に批判する参加者もいた。また批判的な意見の中には、再開発そのものを否定するのではなく、現在の計画の費用対効果や、投資に対する長期的な不安や、市の説明不足に対する批判の声も多かった。現計画のまま再開発が進められるとしても、否定的な意見の一部には実現できることもある。また、反対している人にも、費用対効果などをきちんと説明することで納得してもらえる点もあると感じた。

ワークショップ2 小川駅西口はどんな街で、(再開発後に)どんな街になってほしいか?

(ワークショップの主な意見のまとめ)

後半のテーマでは、小川駅西口の具体的なイメージが浮かび上がってきた。「ぶらぶら歩ける街」「学生、障害者を含めて老若男女、集まりやすい街」「コミュニティの形成」「福祉・バリアフリーの街」「野火止用水、小川用水など景観」「利便性」「周辺との調和」に関連する意見、さらに、「小川らしさ、小平らしさ」とは何かを求めて、計画に反映させたいという声が目立った。

 

ぶらぶら歩ける街、老若男女が集まりやすい街というキーワードの下には、小川駅西口には学校や福祉の施設が多いことから、計画されている約1,000m2の市民広場や、市が買い取る建物の4階、5階の公共床に、学生、障害のある方も含めて多様な人が集まり、新しいコミュニティが形成されることを期待する意見が多かった。

 

福祉・バリアフリーについては、今やどこの再開発でもキーワードになるテーマであるが、とくに小川駅西口には福祉の施設が多いことから意見が多かった。小川駅西口近隣にお住いの車いすの方が1名参加されて、貴重な意見を述べられていた。「積極的に外に出て交流が生まれるような街を希望しているが、大きく広い道路に車が通る場所だと、障害者は怖くて外に出られなくなってしまう」「車椅子は風に煽られる、ビル風が心配だ」など、当事者でないとわからないご意見をお聞きできた。

 

小平市の特徴を市民参加でつくっていきたいという思いも伝わってきた。小平市は、新田開発に伴い7つの村がひとつになって出来たという歴史があるが、小川駅の周辺も最も古くに開発されたエリアの一部である。そして、小川駅が小平市にできた最も古い駅であることが参加者から指摘された。小川駅の歴史、小川駅周辺の特徴を活かしたコンセプトを、施設や広場に反映させたいという意見が目立った。

 

環境、景観に関する意見としては、開発エリアにはシンボル的な緑や景観らしいものはないが、近隣にある野火止用水、小川という駅名・地名から(「小さな川」の“小川”、英語で“stream”のこと)、小川用水などと、公共施設のコンセプトやデザインをつなげることを求める声があった。

 

利便性をもとめる意見も当然多かった。日用品が購入できるスーパーマーケット、美味しい食事ができるお店などを期待する声があった。一方、今ある小川駅前の商店街や、近隣の中宿商店街のお店に対する心配の声と、東口も含めて再開発が周辺と調和や共存できるかを心配する声も多かった。

 

(「わたしたちのまちのつくり方」の意見)

ビジョン・コンセプトとしては、市が公表している「小川駅前周辺地区まちづくりビジョン」があるが、イベントに参加された方は知らなかった人が多かったようだ。周知広報が不十分である上に、その内容が、「地域の暮らしの中心となる」「住みよい、行き良い、賑わいのあるまち小川」というどこの駅でもあてはまるようなもので、小川駅西口周辺の特徴や歴史とつながらないことから、浸透しているとは言い難い。小川駅西口再開発をするにあたっては、再開発のビジョン・コンセプトをもう一度練り直し、周辺住民、市民と共有し、共感してくれる市民、興味を持ってくれる市民を増やしていく必要がある。

 

会としては、現時点での再開発計画ありきという立場はとってないが、どのような計画案でも、デザインや使い方次第で、自然発生的に人が集まりやすい環境をつくれると考えている。現計画の建物の4階と5階の公共スペースについても、公共施設マネージメント推進計画に従って、小川西口公民館・図書館・西部市民センター・おがわ元気村の一部の施設を移設するだけでは、工夫がない。人が集まりやすいという意味では、予約不要・市外の人も自由に使える東村山駅西口ビルのフリースペースなどの例は参考になる。市民の声を取り入れて、人が集まりやすい環境をつくり、新たなコミュニティが出来ることが期待される。再開発の設計は、現在は準備組合によって進められているが、小平市が主導しなければならない部分も多く、縦割り行政で事務的にすすめるのではなく、公共施設マネージメント課と地域整備振興課、都市計画課などが連携して、市としての役割を積極的に果たしてもらいたい。

 

福祉・バリアフリーについては、計画段階で障害のある方の意見が反映出来るような場が持たれるべきである。障害のある方の意見を集約し、チェックする役割を市が担っていくべきだ。小平市が積極的に関与して準備組合との間に入り役割を果たしてもらいたい。

 

今ある開発エリアや周辺のお店が新しい建物に入って商売を継続されるか、あるいは周辺のお店にもお客さんが増えるようなまちづくりになるかというのは、非常に大きな課題である。東村山西口の再開発では、フロアー面積が少ないこともあるが、地権者のお店で建物の中で商売を継続されている店舗は一軒もない。田無駅の北口の再開発ビルのASTAの地下街を見学したところ、大きなスーパーと共存する個人経営の青果屋が3軒ほどあり、それぞれ工夫をして切磋琢磨して活気がある。小平市主催のまちづくりフォーラムで講師を務めたLIFULL HOME’S総研の島原氏の講演が2018年11月10日にあったが、商売をしている地権者が再開発ビルの商業施設では、床の価格が高いため商売を継続できないことが問題であるという指摘があった。現在、準備組合内で、個々の地権者のお店と商業施設への出店の条件について協議がされている。今回紹介した丸亀町の再開発、田無北口などの他の再開発の事例も参照しながら、商業施設で地権者のお店が商売を継続できるよう検討をしてもらいたい。

 

環境・景観について、野火止用水など観光資源として活かすことも考えてもらいたい。野火止用水は、小川駅の北西約400mの位置にある。現在は、小川駅西口の周辺には、どの方向に野火止用水があるかの案内は一つもない。玉川上水と比較して知名度が低いが、小平グリーンロードの一部であり、遊歩道も整備されている。野火止用水を西側に向かって歩くと人が自由に入れる雑木林も残っており、観光資源といえるがあまり活用されていない。2018年11月2日に、武蔵野美大と小平市は、「市と大学が文化芸術における教育研究、まちづくり等の分野において、これまで積み重ねてきた協力関係を一層強化し、発展させるとともに、包括的な連携のもと、地域の課題に適切に対応し、活力ある個性豊かな地域社会の形成と発展及び人材育成に寄与することを目指す」という発表をした。武蔵野美術大学のデザイン力・知恵も活かしながら、小平の用水路の野火止用水や小川用水をイメージすることが出来る親水公園のような要素を検討することも一案だろう。象徴するものがあることで、地域の住民の見方が変わることが期待される。

 

「わたしたちのまちのつくり方」の今後の活動について 

わたしのまちのつくり方では、事業認可に向けて具体的になっていく小川駅西口再開発について、テーマを深堀していく第二弾のイベントの企画を検討している。市や準備組合に対して単に要求を出すだけではなく、地元の方とさらに深くお話しする機会をもち、市民への周知をし、市民の意見をまとめて、「多くの市民が賛同できるまちづくり」を実現するための役割を果たしていきたいと考えている。

以上(文責 わたしたちのまちのつくり方)